「台風やゲリラ豪雨で車が冠水してしまった…」このような場合、車が自走不可能となる場合も珍しくありません。
もしそうなったとしてもご安心ください。冠水被害は、車両保険に入っていれば補償されることになっています。
ただ、自動車保険が定める水害とは一体どこまでなのでしょうか?地震大国の日本では津波被害も発生していますが、そうした場合も補償されるのでしょうか。
今回は、自動車保険と水害の関係について詳しく解説していきます。
20年以上保険業界に携わってきたFP(ファイナンシャルプランナー)。独自の視点で自動車保険を分析して補償内容を語る一方、事故時の対応や保険の使い方まで広く解説できる長年の経験が持ち味。持論は「事故は損害賠償の問題、保険だけじゃ解決できない」です。
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目次
車の冠水は「車両保険」で補償される
豪雨や洪水などによる水没・冠水被害は、車両保険を使って補償を受けることができます。一般車両保険はもちろん、エコノミー型(車対車+A)でもOKです。
ただし、不注意で防波堤から海や湖、川に転落したような場合の水害は補償対象外となります。
エンジンまで水が浸かると全損になることも
エンジンまで水が漬かるとほぼ「全損」扱いになります。一見乾いて問題なさそうに見えても、電装系や駆動系は致命的なダメージが残っているからです。また、室内まで冠水した場合は下水や泥水の匂いが残ることも多く、クリーニングに高額な費用がかかる場合もあります。
冠水でロードサービスを使うことはできる?
水害では車両保険が適用されるのと同様、ロードサービスも対象となります。
浸水した場合はレッカーで近くの修理工場まで運んでもらえます。特に浸水でエンジンが止まった場合はむやみに掛け直そうとすると漏電の可能性があり大変危険です。JAFも注意喚起を出しているので、必ずロードサービスで対処してもらうようにしてください。
自動車保険での「水害」とは?
「水害」といっても幅広く、洪水・水没・浸水・冠水・土砂災害・高潮・津波・転落など多様な言葉が登場してきます。それぞれ意味合いが違いますので東京海上日動火災のHPの記述をチェックしてみました。
洪水 | 河川の水位や流量が異常に増大することにより、平常の河道から河川敷内に水があふれること、および、破堤または堤防からの溢水が起こり河川敷の外側に水があふれること。 |
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台風 | 北西太平洋に存在する熱帯低気圧のうち、低気圧区域内の最大風速がおよそ毎秒17メートル(34ノット、風力8)以上のもの。 |
高潮 | 台風等強い気象じょう乱に伴う気圧降下による海面の吸い上げ効果と風による海水の吹き寄せ効果のため、海面が異常に上昇する現象。 |
津波 | 地震や火山活動、山体崩壊に起因する海底・海岸地形の急変により、海洋に生じる大規模な波の伝播現象 |
転落 | 海や湖、河川に車両が飛び込む。(保険約款には転覆・墜落と記載) |
海や湖、河川に転落しても一般車両保険では補償対象になりますが、エコノミー型の人は補償されないので覚えておきましょう。
津波は車両保険の対象外
津波被害では基本的に車両保険の補償は受けられません。自動車保険に限らず自然災害のうち被害が甚大になりうる地震・噴火・津波は原則補償対象外となっている保険が多いです。
【朗報】津波に対応する特約はある
ただし、津波被害を受けた場合に50万円を限度として支払う「地震・噴火・津波車両全損時一時金特約」という特約を扱っている保険会社もあります。この特約を付けると50万円(車両保険の補償額が50万円未満の場合車両保険金額が限度)までの保険金が受け取れます。この特約は3.11を契機に登場した特約で「50万円あれば何らか中古車の購入が出来て生活再建に役立つのでは?」という意図があります。大手社だけでなくダイレクト系(通販社)でも取り扱っている会社がありますので、特に海沿いにお住まいの方、海沿いを頻繁に通る方は見積もってみてはいかがでしょうか。
冠水時に保険金はどれだけ支払われるのか?
冠水被害を受けた場合、実際にどれぐらいの保険料が支払われれるのでしょうか。
車両保険の保険金を限度に全額補償される
基本的に、修復可能であれば車両保険の保険金額(補償額)を限度に修理費の全額が支払われます。また、全損の場合には保険金額(補償額)の全額と全損時諸費用が支払われます(全損時諸費用特約加入の場合のみ)。
「全損時諸費用」とは、廃車や買い替えでかかる費用のことです。例えばこんなものがあります。
- 廃車に必要な費用
- 買い替えに必要な費用
・解体費
・業者への引き取り費用
・登録抹消費
・登録費
・自動車取得税
・自動車重量税
・車庫証明費用
・納車費
・代行費
また、車両免責を設定していると、当然免責分が差し引かれて支払われますのでご注意を。
では、実際のケースを想定して支払われる保険金の例をご紹介します。
契約条件
保険金額:150万円
免責金額:10万円
ケース1:全損かつ損害額200万円の場合
車両保険金額150万円 − 免責10万円 = 140万円
全損時諸費用10% = 15万円
合計:155万円
※全損時の上乗せ補償は保険会社によって内容が異なります。上記は10%の例です。
ケース2:分損かつ損害額60万円の場合
車両保険金額60万円 − 免責10万円 = 50万円
全損時諸費用:なし
合計:50万円
このような感じで保険金が支払われることになるので、ご参考ください。
豪雨での冠水被害で保険を使うと1等級ダウンする
冠水の場合、保険を使っても1等級ダウンですみます。
通常、車両同士の事故などで保険を使うと3等級ダウンという扱いになりますが、あまり本人に原因と言いましょうか、責任の無い被害については救済措置のような形で1等級ダウンで扱われます。
「事故あり係数」は適用されるので注意
ただし、保険を使うことで「事故あり等級」にはなってしまいますので、保険を使う際は覚えておいてください。
事故あり等級とは、簡単に言うと、通常の等級よりも割引率が低い等級のことです。同じ等級でも無事故の人と事故経験のある人では割引率に差をつけているのです。例えば11等級(47%引)で1等級ダウンすると翌年は10等級(23%引)となりますが、9等級の人が等級アップで10等級になると45%引きとなり、同じ10等級でも差が出てきます。
事故を起こしてダウンした場合
11等級→10等級(23%引き)
無事故で更新してアップした場合
9等級→10等級(45%引き)
↑同じ等級でも事故あり等級のほうが割引率が小さい!
事故あり等級が続く年数は1等級ダウン事故の場合は1年、3等級ダウン事故の場合は3年です。
冠水で1等級ダウンの場合、事故あり等級は1年間で解除されますので、翌年の更新で11等級に復帰した場合は再び47%引となります。
【例外】海や湖や河川に転落した場合は3等級ダウン
エコノミー型では転落が補償対象外なのでここでは一般車両保険の話になります。同じ冠水被害でも、海や川などに転落した場合は1等級ダウンの扱いにはならず、通常の車両事故と同じ3等級ダウンになります。
たとえ3等級ダウンになっても海などへ転落すると確実に全損になるので保険を使うのが得策です。
こんな場合は使ってダメ!保険を使って損するケース
保険を使ったほうがいいいのかどうか、それには「保険を使った方が損か得かどうか」を考える必要がりあります。基本的には「修理費>翌年アップする保険料」の場合のみ保険を使うこを推奨します。
例えば豪雨によって道路が冠水したものの幸いエンジンは無事で一部の電装系の交換で済んだとします。修理費が10万円なのに、翌年の保険料が10万円以上値上がりするなら保険を使う意味はあまりないです。
もらえる保険金が翌年以降に支払う保険料より少ない場合は保険使用を控えるのも手です。もらう保険金と払う保険料とを天秤にかけることが重要で、損得で選んで構わないものです。ただ、中にはまとまった修理費が払えないので保険料が上がっても月払で、という方もいますのであとはご自身の判断で行いましょう。
水害に備えるなら一般型車両保険が安心
水害に備えるなら一般車両保険のほうが安心です。
理由としては、以下が挙げられます。
- エコノー型より補償できる範囲が広くなる
- 「地震・噴火・津波車両全損時一時金特約」は一般車両保険にしかつけられない保険会社が多い
一般車両が安心というのは分かったけど、コスト(保険料)が心配、と言う方はやはりしっかりと見積を比較するのが重要です。
一方で、どうしても保険料の高い安いで決めたり比較しがちですが、保険料比較ではなく予算から見た比較という考え方も重要です。例えば10万円までの予算で考えた場合に、A社はエコノミー型まで、B社は一般車両保険で津波の特約まで付けられた、となるとB社のほうが補償範囲が広いことになります。
保険会社の評判というのも考えがちですが、幾ら評判が良くても無い袖は振れない、無い補償は補償できない、というものであります。
【裏ワザ】車両保険をつけても保険料を抑えるテクニック
ここからは車両保険をつけながらも保険料を安くするテクニックについてご紹介します。
必要な時だけ一般車両保険に切り替える
自動車保険の見直しのタイミングは満期時というのが一番多いかと思いますが、実は期の途中でもかなり柔軟に補償内容の変更ができます。例えば普段はエコノミー型にしておき、台風の直撃を受けそうという天気予報が出れば一般車両保険に変える。そして台風が過ぎたらエコノミー型に戻す。これら一連の手続きは電話一本で出来る保険会社がほとんどです。
エコノミーから一般車両に変更すると一旦満期までの差額を支払う必要がありますが、次に一般車両からエコノミーに変更した場合は差額が戻ってきます。
あまり乗らない時期には車両保険そのものを外して節約することもできます(乗る時に再度車両保険を付帯する)。その他、普段は本人限定や夫婦限定にしておき、他人の運転が予想されるときに限定を外す、そしてまた元に戻す。と言うのも電話一本でOKです。コロコロと補償内容を変える事で節約につながります。
【荒業】保険会社をコロコロ乗り換える
自動車保険は満期の時だけではなく、期の途中でも別の保険会社へ変更して等級を引き継ぐことができます。 例えば、10/1付でA社を解約し、10/1付でB社に加入するという具合で等級が引き継げます(引き継ぎの猶予は7日間。新しい保険会社との契約が遅れると等級が6に戻るので要注意。同日付が無難です)。
比較してもらうと分かるのですが、一般車両保険とエコノミー型の条件次第で保険料の安い会社が変わってきます。保険会社コロコロとは保険会社ごと変えて節約を図る方法です。一方、期の途中で解約すると等級が進まないとうデメリットもあります。20等級まで進行してれば問題ありませんが、荒業のため使いどころは難しいです。(子供が運転するようになって大幅高、期の途中で安い会社に変えるなど
冠水してしまった場合の対応マニュアル
基本的に車が走行可能なのは水の高さがドアの下付近までです。それ以上は車が動かなくなることもあります。
では、もし車が動かなくなったらどうすればいいのか。もし緊急時には以下の手順で速やかに避難をしてください。
- 慌てずエンジンを切る
- 避難経路を考える(安全な場所に避難)
- 保険会社のロードサービスやJAFに連絡
- 超緊急時はサイドガラスから速やかに脱出
脱出マニュアル動画
【おまけ】甚大な災害時には公的支援は受けられる?
基本的に水害による自動車の損害に対しての公的支援はありません。ただ、大規模な水害などでは水害による廃棄物として自治体が無償で撤去してくれる場合があります。
自動車保険のような自助努力が必要となりますが、保険会社では災害支援法が適用された地域で被害を受けた人には更新手続きの猶予、保険料払込の猶予を一定期間受けられる措置を取っています。
まとめ
- 豪雨などの車両の冠水被害は車両保険(一般・エコノミー)に加入していれば補償される。
- 多くの水に関わる被害が補償対象ながら津波被害は対象外(一時金が受取れる特約はある)、エコノミー型では海や湖・河川への転落は対象外。
- 冠水の被害で保険を使うと1等級ダウンして翌年保険料は上がる。
- 一般車両保険が安心。コスト(保険料)が気になる方は一括見積サービスなどで比較検討を。
- 保険期間の途中でも補償の変更は可能。(電話一本でOKの保険会社も多い)季節や使用状況で補償内容を変更して節約しよう。
水害被害は相手がいないので、車が全損してしまったら自分で修理費を支払わなければなりません。特に全損してしまった場合は、多額の買い替え費用が必要となります。このような場合に備え、車両保険を付帯しておくことはドライバーの安心と経済的ダメージの軽減にもつながります。
しかし、車両保険は、付帯すると値段が上がることから付帯率はそれほど高くありません。約半分の人が車両保険を付帯していないのが現実です。
なんども言いますが、自動車保険は安さで決めるだけでなく、「予算で決める」ことも重要です。10万円という予算でどれだけ手厚い補償が受けられるのか。こうしたことも考えながら保険に加入したほうが、もしもの時に安心です。
近年はゲリラ豪雨や台風などで、水害が多発している傾向にあります。他人ごとと思わず、水害にも備えて保険をかけることも有力な選択肢のひとつとなるでしょう。
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