自動車メーカーのCMなどでよく耳にする「残価設定型クレジット」、通称「残クレ」。通常のディーラーローンを組むより月々の支払いが楽になるなどそのメリットばかりを紹介していますが、デメリットも理解しないと思わぬトラブルを招きかねません。
今回は残クレとはなんなのかという基本的なところから、普段は絶対に教えない残クレの裏話までお伝えいたします。
現在中古車販売店の営業として勤務する傍らでフリーライターとしても3年間活動しています。損害保険募集人の資格も持ち、自動車保険の販売も並行して行っています。中古車を販売しながら、それに付随した自動車保険の提案を行っておりますので、より現場に近い立場から自動車保険のことについて解説ができます。またフリーライターとしての経験を活かし文章で皆様にわかりやすく自動車保険のことについてお伝えしていきたいと思っております。
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目次
月々の支払いが楽になる?「残クレ」の仕組みとは?
残価定額クレジット(残クレ)とは、車両価格の一部を据え置き、残りの部分を分割払いで支払っていく方法です。例えば200万円の車で100万円の残価設定で残クレを使うとすると、残りの100万円を分割払いで支払っていくことになります。
ネットでは「下取り価格を割り引いた額でローンを組める」などと紹介されていることがありますが、厳密に言えばこの情報は正確ではありません。ローン支払い後も車を使い続けたければそのまま残りの金額も支払う必要があります。逆に支払いをやめるのであれば車は返却するのが、残クレの決まりです。
残クレ、ローン支払い完了後の4つの選択肢
残クレ利用者は、最後に以下4つの中から選択することになります。
- そのまま分割払いを続け乗り続ける
- 一括払いで自分のものにする
- ディーラーに返却する
- 同じディーラーの新しい車に乗り換える
少しわかりにくいかもしれませんので、残クレの例を1つみてみましょう。
- 200万円の車を3年36回払いの残価設定型クレジットで購入
- この時3年後の残価は100万円
これでいうと100万円を35回の分割払いにし、残価として設定した100万円は最終回(36ヶ月目)に支払うことになります。くれぐれも100万円だけ支払えばいいという制度でないことは覚えておいてください(自分のものにしたければ支払いの対象はきっちり200万円です)。
ローン額の計算は残価が差し引かれた100万円部分となるので、通常通り200万円のローンを組むよりも毎月の返済額は少なくなります。ただし、借入は残価を含めた全額で行っており、金利も全額にかかっているということは留意しておきましょう。
残クレの金利は3〜5%が標準
残クレの金利は各社によって多少違いがありますが、だいたい3~5%で設定されていることが多いです。また一部人気車種などに限り特別金利が適用されることがあり、その場合は2%前後と低い金利で契約できることがあります。
残クレだから審査に通りやすくなるわけではない
基本的には残クレも通常ローンも審査の基準は同じです。残クレだから審査が甘いということはありません。月々の支払が低くなる分身の丈以上の車で審査をする傾向にありますが、し元金が減っているわけではないので審査に通らない方も多いです。目安としては安定した収入が年間200万円以上ある方で、過去に金融事故など起こされていない方であれば審査は通りやすいと言えるでしょう。
通常ローンと支払額はどれだけ変わるのか?
実際に通常ローンと残クレとの毎月の支払額をシミュレーションしてみましょう。
- 車両価格:200万円
- 金利:通常ローン(3%) / 残クレ(5%)
- 支払い回数:36回払い
- 残価設定:100万円
通常ローン | 残クレ | |
---|---|---|
車両価格 | 200万円 | 200万円 |
ローン金利 | 3% | 5% |
毎月の支払い | 58,162円 | 30,765円 |
このように毎月の支払いは通常ローンと比べるとかなり安く済むことがおわかりいただけたはずです。
自動車販売店現役営業マンが警告!残クレのリスク
残クレは月々の支払い額を抑えられる方法としては優秀ですが、反面大きなリスクもあります。以下3点のリスクを理解しないと思わぬ落とし穴にハマることもあるので、必ず理解した上で利用するようにしてください。
- 返済中に事故を起こす可能性がある
- 過走行だと返却時の車両価格がダウンする
- 最初に設定した残価が高すぎることもある
残クレ返済中に事故を起こしてしまうかもしれない
万が一残クレ返済中に事故を起こしてしまうと、返却時に大きな出費が発生する可能性もあります。
軽い事故程度であればどこの残クレでも評価損が発生することはそうないでしょう。しかし事故歴が付くような事故を起こしてしまった場合、返却時の車両評価額はほぼ確実に設定した残価を下回ります。その差額分がどうなるのかというと、購入者が負担しなければなりません。万が一高級車で高い残価設定をしていた場合数十万円の負担額が発生してしまうこともあります。気を付けて運転すれば問題ないと思うかもしれませんが、道路上では何が起こるかわかりません。自分が気を付けて運転していても、後方から猛スピードで追突されることもあります。自分に過失はなくとも事故車は事故車です。残クレはそこまで保証してくれません。
過走行だと返却時の車両価値が残価を下回ってしまう
残価は将来の車の価値を予想して付けられています。もし予想よりも過走行になっていた場合は車両価値が残価を下回ってしまい、差額分の負担をしなければならなくなります。
残クレによってはあらかじめ月の走行距離を決めてその距離以内は残価を保証するプランもありますが、3年後や5年後にどれだけ走行距離が伸びているかの予想は意外と難しいです。今は月1,000㎞も走行していないとしても、もしかすると職場が今よりも遠い場所に変わるかもしれません。生活スタイルが変わって車を使用する機会が増えるかもしれません。3年、5年という期間があればそういったことが起こる可能性はおおいにあります。もしそうなってしまった時に残クレで買わなければと後悔しても遅いのです。
最初に設定した残価が高すぎることも
なるべく月の支払いを抑えようとすると、残価を高く設定するしかありません。本来なら余裕を持った残価を設定するべきですが、商談内容によってはギリギリまで高く残価を設定することもあります。そうなった場合、もしちょっとでも過走行になっていたりキズや凹みが多かったりすると残価をカバーできなくなり差額の負担が発生してしまいます。
月々の支払いが安くなったといっても、購入総額が安くなっているわけではありません。何処かでしわ寄せがくることを理解しておきましょう。
残クレでの購入はあまりおすすめできない?
私自身は残クレでの購入はおすすめしていません。理由はいくつかありますが1番の理由は「身の丈以上の車に手が出せてしまうから」です。
確かに月々の支払いだけ見ると安くなっているように見えますが、購入総額で言えば同じか少し高いことがほとんどで、実際には全然安くなっていません。
例えば同じ3年や5年で乗り換えるなら、月々の支払いは少し増えますが、残価設定型クレジットで購入せず、通常ローンで購入して3年後、5年後に正規の価格で買取ってもらい、それを頭金にして次の車に乗り換えた方が断然お得ですし、車に乗っていて不自由もありませんし支払いでのトラブルも少ないです。
もし月々の支払いが増えたら購入できないというのであれば、その車はあなたが購入するべき車ではありません。もっと安いランクの車にするか中古車を検討するべきです。
残クレはそういった身の丈以上の車に手が出せてしまう、魅力的な反面よく知らずに手を出すと後々後悔するリスクが高いプランだと思っています。
営業マンにとって残クレのお客さんは良いカモになってしまう
それでは何故このようなリスクが多いプランなのにも関わらず各社は大々的に宣伝を行い、営業マンはあたかも魅力的なプランであるかのように残クレを勧めるのでしょうか。
答えは簡単です。残クレで購入頂いたら単純に儲かるからです。
本当なら中古車に流れてしまうユーザーが、残クレなら中古車でローンを組むのと同じくらいの月々支払で済むように見えるので新車を買ってくれる。
本来なら低グレードの車を購入するユーザーが残クレなら月々の支払いが安く見えるので高グレードの車をオプションもりもりで注文してくれる。
この「安く見えるので」というのがポイントですよ。決して安くなっているわけではありません。高い元金にまるまる金利手数料が付いていますし、万が一車両返却時に車両価値が残価を下回っていても、購入車負担でディーラー側に痛手は一切ありません。
そういったディーラー優位の契約になっているのが残クレなのです。そんな残クレに対して「月々の支払いが楽だから」と飛びついてくるお客さんこそ我々にとっては良いカモです。
甘い話には裏があるものです。残クレもそう。メリットだけでなくデメリットやリスクもしっかりと理解し、それでも利用したいという時だけ利用するようにしましょう。
一部残クレに向いている人はいる
ここまで残クレに対して否定的な意見を述べてきましたが、一部残クレに向いている車や人がいることも事実です。ここではこういう人は残クレを利用するのもアリかなと思うパターンを紹介します。
1つの車種に長く乗らない人
元々1つの車種に長く乗り続けず、様々な車種に乗りたいという方は残クレ向きと言えるでしょう。残クレなら月々の支払い額を抑えながら3年や5年サイクルで新車を乗り継ぐことができます。
車の使用頻度が少ない人
車の使用頻度が少ない人も残クレ向きと言えます。残クレのリスクの大部分は返却時の車両価値が残価を下回ってしまうところにあります。
車の使用頻度が少なければ過走行になることもなく、事故にあったり車をキズつけたりする可能性も少なくなり、大部分のリスクを回避することができます。
背伸びをしてでも高級車に乗りたい人
これは残クレの魅力でもあり、あぶないところでもある諸刃の剣ですが、本当なら手が出せないはずの高級車でも手が届く月々の支払いで購入することができます。
どうしても乗りたい、だけど手が出せない、そんな車がある場合は残クレを検討してみるのもアリでしょう。
残クレのメリット・デメリットは?
月々の支払い負担が軽くなる残クレですが、利用時には改めてメリットデメリットを理解することが重要です。以下に残クレのメリット・デメリットをまとめてみます。
残クレのメリット
残クレのメリットは次の3点です。
- 月々の支払いが楽になる
- 高級車にも安く乗れる
- 短期間で新車に乗り換えができる
月々の支払いが楽になる
月々の支払いは通常ローンよりも安く抑えることができますので、比較的楽に返済を進めていくことができます。とにかく初期費用を安くしたい方に向いている制度だと言えるでしょう。
高級車にも安く乗れる
月々の支払いを通常のローンよりも安く抑えることができるため、通常ローンでは手が出せなかったワンランク上の高級車にも手が届くようになります。高級車は将来の下取り価格も高い場合が多いので、残クレ向きの車といえるでしょう。
短期間で新車に乗り換えができる
残クレの場合、最終支払時に車を返却することでローンの清算を行いますのでまた次の新車に乗り換えることができます。通常残クレは3年から長くとも5年程度の期間でローンを組みますので、短期間で新車に乗り換えるサイクルを続けることができます。
残クレのデメリット
逆に残クレのデメリットは以下の4点です。
- 金利が高い
- 制限が多い
- 残価で損をする可能性が高い
- カーリースのような感覚になってしまう
金利が高い
特別金利を除き残クレの金利は3~5%となっております。もし銀行などで新車ローンを組んだ場合、金利はここまで高くないことが多く金利面では損をする結果になりそうです。
制限が多い
残クレの種類によっては走行距離に制限があるもの、車のカスタムをしてはいけないと規定があるものなど様々な制限がつきまといます。
自分の車なのに走行距離を必要以上に気にしながら走らないといけなかったり、自由にカスタムができなかったりと不自由が多いことも念頭に入れておきましょう。
残価で損をする可能性が高い
初めに設定する残価ですが、将来の車の価値なんて本来はわかるはずがありません。それでもメーカー各社は残価設定型クレジットで残価保証を謳っています。
これは逆に考えれば残価保証しても問題ない程度の残価しか設定していないことの裏返しです。本来であればもっと高額で買取ってもらえるはずの車でも気づかずに残価だけで清算していることがほとんどです。
カーリースのような感覚になってしまう
残価設定型クレジットで購入した車には必要以上の制限が付きまといます。また万が一事故をした場合、残価を保証してもらえなくなるので必要以上に気にしながら運転をしなければならなくなります。これだとせっかくの愛車なのにまるでカーリースのような、自分のものではない感覚になってしまいます。
まとめ
- 残クレは残価も含め全額を借り入れる契約
- 残クレのメリットは月々の支払いが抑えられること
- 残クレだと購入した車に様々な制限が付くことも
- 残クレはリスクも多くあぶない
- 正直残クレはおすすめできない
- 一部残クレに向くパターンもある
今回は残クレについて、仕組みや金利からそのメリット・デメリットに至るまで隅々まで徹底的に解説させて頂きました。
残クレはワンランク上の車や憧れの高級車にも手が出せる非常に魅力的なプランです。しかし、魅力的なだけでなく大きなリスクや制限が付きまとうことも併せて理解しておきましょう。
リスクやデメリットをしっかり理解した上で残クレを選べば、少なくとも残クレを組んだことに対して後悔することはないでしょう。
ただしやはり私個人としては、残クレはあまりおすすめできません。
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