公務員は福利厚生が充実しており様々な制度が設けられています。「自動車共済」もそのひとつです。民間の自動車保険とどちらに加入すべきか悩むところではありますが、費用や機能面をみるとどちらが優れているのでしょうか。今回は公務員の自動車共済について詳しくお伝えします。
大手損保会社にて、自動車事故後のお客様対応をしていました。主な仕事は、保険金の支払いしたり、契約者様の代わりに相手方と示談をすることです。一年に数百件の事故担当をしたこともありました。事故が起こった時に気を付けるポイントなど、保険会社の目線で詳しく伝えたいと思っています。また損害保険募集人の資格も持っていますので、保険の知識を生かして、保険の意義についても伝えていきたいと思っています。
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目次
そもそも「自動車共済」とは何か?
「自動車共済」とは自動車保険と同じ役割を果たす共済制度です。共済特有の特徴としては以下3つがあります。
- 組合員同士で支えるというシステム
- 営利目的で運用していない
- 条件を満たした人でないと加入できない
共済事業に出資している組合員しか利用できないため、誰でも加入できるわけではありません。民間保険と違い営利を目的にしていないのも大きな特徴と言えるでしょう(共済は相互扶助を目的としています)。
かつては「共済は民間保険より安い」と言われてきましたが、通販型自動車保険の台頭により共済と自動車保険の価格差もなくなってきました。定額制の共済であれば民間保険より一見安く見えますが、車両保険や人身傷害保険がなかったりと補償がいまいちです。値段だけでなく必ず補償内容までチェックするようにしましょう。
国家公務員・地方公務員・教職員によって加入できる共済は変わりますので、以下を参照してください。
共済名 | 資格 | 特徴 |
---|---|---|
国公共済会 | 国家公務員 | 日本国家公務員労働組合連合会に入ることが必要。民間保険とほぼ同様の仕組みを設けている。 |
全国都市職員災害共済会 | 地方公務員 | 都市職員であること、都市職員に準ずる職員特別地方公共団体等の職員であることが加入条件(退職した元都市職員も組可)。生活協同組合となっており、加入後すぐに共済事業を利用することが可能。補償内容が限定されていたり、定額制となっていたりと民間保険と仕組みは大きく異なる。 |
全国町村職員生活協同組合 | 地方公務員 | 町村および町村が構成団体となる特別地方公共団体、一定の町村関係団体等に勤務していることが条件(市町村合併等で市となった旧町村の職員も当分の間、継続して組合員となることが可能)。補償内容が限定されていたり、定額制となっていたりと民間保険と仕組みは大きく異なる。 |
教職員共済 | 教職員 | 教職員のみが加入可能。民間保険とほぼ同様の仕組みを設けている。 |
公務員の自動車共済は民間保険と何が違うのか?
公務員向けの自動車共済と民間の保険とを比べると、国公共済会と教職員共済に関してはほぼ同等の内容になっています。しかし、地方公務員の「全国都市職員災害共済会」「全国町村職員生活協同組合」に関しては民間保険と大きく違うシステムになっているので注意してください。異なる点は大きく3点です。
- 補償内容が手薄
- 補償内容の変更・金額設定ができない
- 年齢条件や等級に左右されない定額制
補償内容が手薄(車両保険・人身傷害保険がない)
通常、自動車保険は「対人賠償」「対物賠償」「人身傷害保険」「車両保険」4つの基本補償が用意されています。この中で人身傷害保険・車両保険が地方公務員向けの共済には用意されていません(教職員共済も車両保険は設けていません)。車両保険は加入できないわけではないのですが、民間損保と提携した「車両共済」に申し込む必要があります。人身傷害に関しては自損事故のみ1,500万円の補償を受けることができますが、重大事故を想定すると不安が残る金額設定です(金額をアップすることもできません)。
民間保険 | 国公共済会 | 全国都市職員災害共済会 | 全国町村職員生活協同組合 | 教職員共済 | |
---|---|---|---|---|---|
対人補償 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
対物補償 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
人身傷保険 | ○ | ○ | △(自損のみ) | △(自損のみ) | ○ |
車両保険 | ○ | ○ | ×(民間車両保険と契約必要) | ×(民間車両保険と契約必要) | ×(民間車両保険と契約必要) |
補償内容の変更・金額設定ができない
民間の保険は補償内容や金額設定を希望に合わせて変更することができますが、地方公務員の自動車共済はデフォルトの内容から変更できません。
年齢条件や等級に左右されない定額制
上記との絡みで金額は変動せず、定額で共済を使うことができます。年齢条件や等級制度などもなく、逆に言えば若い人には有利な金額で利用できると捉えることもできます。
全国都市職員災害共済会:28,000円
全国町村職員生活協同組合:33,000円
公務員自動車共済と民間保険、保険料はどれだけ違うのか?
自動車共済は安いという印象をもたれがちですが、実際には民間保険との差はなくなりつつあります。特にダイレクト型自動車保険は割安な商品を販売しており、かなり安い掛け金で保険商品を提供しています。
以下は代理店型・ダイレクト型・公務員向け自動車共済の保険料を比較したものです。
車種情報:プリウス(トヨタ)/新規6等級
運転者情報:21歳 / グリーン免許
補償プラン:対人:無制限 / 対物:無制限 / 人身傷害:3,000万円 / 車両保険:なし
その他特約:なし
保険会社 | 車両保険あり(一般型) | 車両保険あり(エコノミー型) | 車両保険なし |
---|---|---|---|
東京海上日動 | 207,060円 | 142,950円 | 80,750円 |
損保ジャパン | 171,960円 | 130,700円 | 68,320円 |
三井住友 | 209,810円 | 146,620円 | 85,320円 |
あいおいニッセイ同和 | 213,410円 | 152,610円 | 90,460円 |
ソニー損保 | 194,120 円 | 130,350 円 | 71,470 円 |
SBI損保 | 150,660円 | 100,560円 | 54,630円 |
アクサダイレクト | 233,870 円 | 152,390 円 | 83,880 円 |
イーデザイン損保 | 266,810円 | 176,910円 | 99,880円 |
セゾン自動車火災(おとなの自動車保険) | 175,590円 | 121,620円 | 71,280円 |
チューリッヒ | 329,970円 | 219,770円 | 139,050円 |
三井ダイレクト | 195,050円 | 123,150円 | 64,970円 |
国公共済会 | 195,860円 | 123,000円 | 78,410円 |
教職員共済 | 民間の車両保険への加入の必要あり | 民間の車両保険への加入の必要あり | 109,770円 |
全国都市職員災害共済会 | 民間の車両保険への加入の必要あり | 民間の車両保険への加入の必要あり | 28,000円 |
全国町村職員生活協同組合 | 民間の車両保険への加入の必要あり | 民間の車両保険への加入の必要あり | 33,000円 |
※教職員共済は、搭乗者傷害が5000万円のプランで試算しています。
ダイレクト型自動車保険の台頭により「共済は安い」の時代は終わった
かつては「共済は掛け金が安い」という認識が一般的でした。しかし1996年の保険自由化以降、日本にもダイレクト型自動車保険が登場し割安に自動車保険を利用できるようになりました。表を見ていただけるとわかるかと思いますが、SBI損保、おとなの自動車保険、三井ダイレクトなどは自動車共済よりも安い保険料となっています。かつ、自動車保険は商品として他者との競争を行っているため、特約や割引サービスなども充実しています。昔は保険料が安いことで共済を選ぶ方も多かったのですが、最近はあえて自動車共済を選ぶ必要性も薄れてきました。もし割安な保険を探しているのであれば、ダイレクト型自動車保険も選択肢にいれ試算してみるといいでしょう。できればたくさんの会社の見積もりをとってみたほうが望ましいです。自動車保険選びで重要なのは「比較すること」です。一括見積もりなどを使い、たくさんの情報を仕入れることが保険料節約への近道です。
事故対応はどうなる?民間保険と比較した場合に不安が残る示談交渉力
事故を起こした時に相手ときちんと示談交渉を行ってくれるのか。自動車保険を選ぶ際には保険料と共に必ず話題に上がるほど気にしている人は多いです。
自動車共済にも専門スタッフがおり示談交渉をしてくれるわけですが、実際は民間保険のスタッフと比べると力量には差が現れやすい傾向があります。民間保険は事故対応の満足度をあげることが顧客獲得にも繋がるため、スタッフ育成も含めかなりの力をいれています。またスタッフそれぞれが保険募集人資格を持っており、知識の幅も拾いです。一方の自動車共済はそもそも商品ではないので、そうした企業努力が見られるわけではありません。スタッフの知識にも疑問をもたれることも多く、民間保険と比べるとどうしても見劣りしてしまうのが実情です。
もし自分の過失割合が低い事故に巻き込まれた場合は、共済スタッフに任せるのではなく弁護士に依頼して示談を進めるほうが望ましいと言えるでしょう。
安心を手に入れるならやはり民間保険を選んだほうが無難か
民間保険の良さはスタッフや担当員の手厚い対応にあります。特に代理店型自動車保険は保険の補償組みから事故時の対応まで一貫しておこなってくれることが大きなメリットです。初心者は代理店スタッフのサポートを受けながら保険を決めたほうが望ましいと言えるでしょう。自動車保険は損害保険の中でも特に複雑と言われている保険です。勘違いしたまま補償組みをしてしまうともしもの時に補償が受けられなかったなんてこともありえますし、ムダな保険料を払い続けるリスクもあります。餅は餅屋ではないですが、プロのサポートを受けながら保険選びを進めたほうが、結果的に安心して運転することにつながるでしょう。
ロードサービスは民間保険とほぼ変わらないサービスを受けられる
公務員向け自動車共済にはロードサービスもきちんと付いており、事故時のレッカー移動やバッテリー上がりなどの緊急時の処置を行ってもらえます。このあたりは民間保険と遜色ないサービスが受けられると考えていただいて構いません。
- レッカー牽引
- 応急処置(バッテリーのジャンピング・キー閉じ込みの対応などなど)
- ガス欠時の給油サービス
上記に関しては問題なくサポートを受けることができます。
共済保険は年齢と保険料で加入を検討しよう!
共済保険に加入するタイミングとしては、 民間の保険会社の保険料と共済保険の保険料を比較することが大事です。
下記の2つのタイミングで、保険の乗り換えを検討するのが良いでしょう。
事故有係数で民間の保険料が高くなった時に見直す
事故あり係数で民間保険料が高くなった時に、共済に乗り換えることで保険料を抑えることが可能です。民間の保険会社は営利目的ですので、保険料が高くなりがちです。しかし、共済の場合は営利目的ではないので、事故を起こしてもそのまま定額か、事故ありの場合であっても負担が少ないこともあります。
若い時は割高だけれども、定額のため年齢を重ねた時に安くなる場合も
特に地方公務員や教員向けの自動車共済は、若い時は割高の可能性が高いです。それは、運転になれていなくて車両保険を付帯すると、民間の保険会社と組み合わせることで高くなってしまうからです。
ただ、地方公務員向けの自動車共済は、定額なので補償が少なくても良いということであれば、年齢が低くても安くなる可能性があります。
民間保険と等級の引き継ぎはできない
公務員の自動車共済には民間のノンフリート等級の制度がありませんので、等級の引き継ぎはできません。共済から民間の自動車保険に乗り換える時は新規契約の6等級からのスタートとなります。
もし保険から共済に乗り換える場合は中断証明書を発行しておいたほうがいいかもしれません。中断証明書を発行していれば、10年間等級を保存しておくことができ、再開時に引き継ぐことができます。もしまた共済から保険に戻るときには以前の等級でスタートできるので便利です。
5等級未満の場合、共済組合に申告が必要な場合も
現在、加入の自動車保険が5等級未満の場合、共済組合に申告が必要な場合もあります。事故が多ければリスクが多い被保険者とみなされてしまい、加入にも審査が必要になる場合があります。定額だから、 営利目的ではないからと言って、誰でも入れるという訳ではない事を覚えておきましょう。
補償内容と保険料をしっかり把握しよう!
公務員向けの共済は、公務員の職種ごとに加入先が変わってきます。加入先が変われば補償内容や保険料も変動します。まずは、自分がどの共済に加入できるのかを知りましょう。また車両保険の有無など、どんな補償を受けられるのか内容を確認することが大事です。
ただ一つ注意点があり、一見共済保険の方が安く見えても、ダイレクト保険に見直した方が保険料が安くなることもあります。共済で見積もりをとってみるのであれば、同じようにダイレクト型でも無料見積もりをすることをお勧めします。
まとめ
- 公務員共済は、職種によって3種類に分かれる
- 国家公務員向けの自動車共済は、民間の自動車保険の会社と同じ補償内容を選択できる
- 地方公務員向けの自動車共済は、定額制
- 教職員向けの自動車共済は、車両共済の付帯は民間の保険会社で加入
- 年齢や条件によっては、ダイレクト型の方が安くなるケースもある
共済保険にはメリットとデメリットが存在します。自分が自動車事故を起こした時に、どんな補償を受けたいのか、しっかり考えて吟味することが大事です。
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