「もしもの事故」に備えるための自動車保険。事故を起こすと保険金が支払われるというシンプルな仕組みが故に、保険会社によって値段が違うことに疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。さらに「格安の保険だとちゃんとしたサービスが受けられるのか心配」と思う方もいると思います。
確かに通販型自動車保険は、事故対応の時間に制限があること、対応は電話がメインになること、手続きなどを任せられる代理店スタッフがいないことに加え、クレジットカードがないと分割払いにできないこと、デメリット等級の受け入れに厳しいことなどのデメリットがあります。だからと言って「通販型自動車保険は質が悪い」と決めつけるのは早計で、数万円もの保険料アップを許容してまでこれらのデメリットを取り除かなけれいけないかというと全ての人がそういうわけではないはずです。これらを許容できるようであれば保険料が割安な通販型自動車保険を選んだほうがお得に保険を使うことができます。
今回は、「安い保険が気になっているけどきちんとデメリットが知りたい」という人に向け、格安自動車保険にデメリットについてお伝えしていきます。
現在中古車販売店の営業として勤務する傍らでフリーライターとしても3年間活動しています。損害保険募集人の資格も持ち、自動車保険の販売も並行して行っています。中古車を販売しながら、それに付随した自動車保険の提案を行っておりますので、より現場に近い立場から自動車保険のことについて解説ができます。またフリーライターとしての経験を活かし文章で皆様にわかりやすく自動車保険のことについてお伝えしていきたいと思っております。
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目次
本当のところを知りたい!ネット通販型自動車保険のデメリット
CMでよく見かける通販型の自動車保険。「格安な自動車保険」といえばこの通販型自動車保険を指すことが一般的です(イーデザイン損保・アクサダイレクト・ソニー損保・チューリッヒなどのCMは一度は見たことがあるのではないでしょうか)。通販型自動車保険は徹底的なコストカットを行い割安な保険料を実現しているわけですが、その仕組み上どうしてもデメリットも生じてしまいます。それが以下の7点です。
- 事故対応は「電話対応」がメインとなる
- 深夜・早朝での事故だと初期対応が遅れる
- 大災害などではマンパワー不足に陥りやすい
- 補償プランは自分で決めることになる
- デメリット等級の受け入れに厳しい
- クレジットカードがないと分割場合不可
- 加入時の入力ミスが自己責任になる
事故対応は「電話対応」がメインとなる
ネット通販型は人件費等のコストを徹底的にカットする戦略をとっており、事故対応拠点数も大手損保に比べると少ない傾向にあります。特に地方には拠点を設けていない損保も多く、事故対応は電話対応がメインとなる場合がほとんどです。
しかし、電話対応だからといって事故対応が悪いというわけではありません。事故対応の本質は、相手方とのスムーズな示談交渉と保険金の支払いです。代理店型と通販型、保険料に違いはあっても行っているサービスに違いはありません。保険会社の「専任担当者」が事故対応を行う流れはどこも一緒であり、どの保険会社もしっかりと行ってくれます。
深夜・早朝での事故だと初期対応が遅れる
ネット通販型、代理店型両者の初期対応時間を比較してみると、多くの代理店型が24時間対応なのに対し、ネット通販型は9:00〜20:00前後となっています。考えられるリスクとしては、深夜や早朝に事故を起こした場合、その場で相手に電話取次をしてもらえないこと。相手がいる事故では、自分たちだけで話し合いをしたことで後にトラブルになったり、相手に詰め寄られるなどのリスクが考えられます。初期対応時間内ならその場ですぐにスタッフが相手に電話対応してくれますが、対応時間外だとそうもいきません。通販社を選ぶ際はこの点を十分に理解する必要があるでしょう。
大災害などが発生するとマンパワー不足に陥りやすい
ネット通販方は人件費をカットしている関係上、スタッフの数も必要最低限にとどめています。マンパワーで言えば代理店型のほうが圧倒的に有利なため、処理能力には違いが現れやすいです。特に大災害時(豪雨被害など)の対応スピードについては大きな違いが見られたことは覚えておいたほうがいいかもしれません。
補償プランは自分で決めなければならない
代理店型は代理店スタッフがおすすめのプランや骨組みを考えてくれますが、ネット通販型は全て自分で決めなければいけません。基本補償(対人・対物・人身傷害・車両保険など)や特約の内容、設定金額の塩梅をしっかりと理解していなければ補償を組むことは困難でしょう。保険料を抑えたいからといってむやみに低く設定すると、万が一の事故の時に十分な補償を受けられなくなります。
裏を返せば「無駄のない補償プランを選べる」というメリットにもなる
しかし、違う側面から見ると「ムダな補償を省ける」というメリットにもなります。
代理店は顧客が契約した保険料の数%をもらうビジネスモデルのため、手厚めのプランを提案してくることもあります。確かにあったら嬉しいというものがほとんどでしょうが、実際にその特約を使うケースがあるかどうかは微妙なことが多いです。一方ネット通販型は自分で好きなように補償プランを決められるため、余計な営業を受けることもありません。そういう意味では、ムダのない補償組みがしやすいというのはネット通販型の強みと言っていいでしょう。
分割払いはクレジット払いがほとんどとなる
代理店型であれば、銀行引き落としや払込用紙による現金払いによる分割払いに対応していますが、ネット通販型はクレジッドカードでの決済しかできないところがほとんどです。
※チューリッヒ・アクサダイレクトは口座振替可。
保険会社 | クレジットカード | 銀行引き落とし |
---|---|---|
アクサダイレクト | ○ | ○ |
チューリッヒ | × | ○ |
ソニー損保 | ○ | × |
三井ダイレクト | ○ | × |
セゾン自動車火災 | ○ | × |
イーデザイン損保 | ○ | × |
SBI損保 | ○ | × |
そんぽ24 | ○ | × |
デメリット等級の受け入れが厳しい
ネット通販型は保険料が安い分、自動車保険の等級が低い人(事故のリスクが高い人)の加入を嫌う傾向にあります。5等級以下の人はネット通販型には加入できない場合もあるので留意しておきましょう。
加入時の入力・操作ミスに注意が必要(間違った補償になる可能性がある)
ネット通販型は加入はネット申し込みになります。入力や操作ミスで間違った補償プランになってしまうリスクもあります。選択間違いや選択のし忘れは全て自己責任です。誰も指摘してくれませんのでしっかりと確認をするようにしましょう。
とはいえネット通販型自動車保険のサイトはどれもそういったことがおこらない親切な設計にはなっています。よほど確認不足でなければ入力、操作ミスで間違った補償になることはないでしょう。
通販型自動車保険の事故対応における2つの弱み
通販型自動車保険と代理店型自動車保険の事故対応ですが、基本的には大きな違いはありません。しかし、代理店型自動車保険とは2点違う点が出てくるので覚えておきましょう。
保険会社とのやりとりを仲介してくれるスタッフがいない
事故がおきると保険会社は状況確認を行わなければならないため、ドライバーは状況説明をすることになります。代理店自動車保険を使っていればスタッフに仲介してもらえることもできますが、通販型の場合は本人が直接保険会社とやりとりしなければなりません。ここで気をつけなければならないのは、説明した事故状況が保険約款を外れてしまうと保険金が降りないということです。代理店スタッフはこうした点を抑え、なるべく保険金が支払われるように説明してくれるところもありますが、保険知識のないユーザーは間違った伝え方をしてしまって保険金が下りなくなる可能性も考えられます。「通販型自動車保険の支払い基準が渋い」と言われることがありますが原因はここにあります。実際は代理店型自動車保険でも通販型自動車保険でも保険約款の内容に大きな違いはありません。しかし、事故状況の説明を保険のプロに任せるか、知識に乏しいユーザー自身が行うかで、支払いが行われるかどうかも違う結果になるのです。
初期対応時間が短い
現在はどの保険会社も事故受付は24時間が基本です。しかし、「受付」と「対応」は違います。代理店型自動車保険は初動対応も24時間対応が多いのに対し、通販型自動車保険は時間に制限がことがほとんどです。深夜や早朝に事故を起こした場合、対応が遅れてしまう可能性があるのは通販型自動車保険の弱みだと言えるでしょう。
保険会社 | コールセンターの初期対応可能時間 |
---|---|
東京海上日動 | 24時間 |
三井住友海上 | 9:00~22:00 |
損保ジャパン | 24時間 |
あいおいニッセイ同和 | 24時間 |
保険会社 | コールセンターの初期対応可能時間 |
---|---|
ソニー損保 | 0:00~20:00 |
SBI損保 | 9:00~19:00(土日祝は17:00まで) |
アクサダイレクト | 9:00~19:00 |
チューリッヒ | 9:00~20:00 |
イーデザイン損保 | 9:00~20:00 |
三井ダイレクト | 9:00~19:00 |
セゾン自動車火災 | 9:00~17:30(土日祝は17:00まで) |
ロードサービスについては通販型でも十分なサービスが受けられる
保険料が安いと十分なロードサービスが受けられないのではと心配になるかもしれませんが、通販型のロードサービスは十分な補償内容となっています。
ロードサービスは主に3つに分けられ、「①レッカー移動」「②路上トラブル時の対処」「③帰宅困難時の宿泊サポート」のそれぞれが受けられます。通販型自動車保険もこれらの内容すべて網羅されており、代理店型と同様のロードサービスを受けることができます。
保険会社 | バッテリー上がり | パンク時のスペアタイヤ交換 | ガス欠 | キー閉じ込み | 落輪 | 無料レッカー | 宿泊費負担 | 帰宅費負担 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ソニー損保 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | 150km | 実費・限度額なし | 実費・限度額なし |
イーデザイン損保 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | 60km | × | × |
アクサダイレクト | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | 35km | 実費(1泊分まで) | 実費・限度額なし |
SBI損保 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | 50km | 1万5,000円/1名 | 公共交通機関は限度額なし レンタカーは24時間分 |
セゾン自動車火災 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | 15万円分 (約300km) |
1万円/1名 | 2万円/1名 |
チューリッヒ | ◯ | ◯ | × | ◯ | ◯ | 100km | 実費(1泊分まで) | 実費・限度額なし |
三井ダイレクト | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | 50km | – | – |
東京海上日動 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | 10万円分 (約200km) |
1万円/1名 | 5万円/1名 |
損保ジャパン日東興亜 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | × | 15万円分 (約300km) |
1万円/1名 | 2万円/1名 |
三井住友海上 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | 30万円分 (約600km) |
1万5,000円/1名 | 2万円/1名 |
あいおいニッセイ同和 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | 30万円分 (約600km) |
1万5,000円/1名 | 2万円/1名 |
AIG損保 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | 30万円分 (約600km) |
1万円/1名 | 2万円/1名 |
JA共済 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | 30km | 1万円/1名 | 1万円/1名 |
通販型自動車保険が格安に使えるのは「コストカット戦略」のおかげ
通販型自動車保険と代理店型の自動車保険は販売戦略がそもそも違います。代理店型は全国の代理店を通して対面販売しているのに対し、通販型はネットを通じて販売しています。代理店には代理店手数料を支払わなければいけませんが、通販型にはこうしたコストはかかりません。さらに代理店は全国に事故対応拠点(支店)を設けているのに対し、通販型は都市部のみにしか支店展開していません。こうした「コストカット戦略」が安く保険を使える理由です。
勘違いしやすいのは、安い分サービスが悪いというわけではないこと。確かに初期対応時間に関しては代理店型自動車保険のほうが優勢ではありますが、根本的にサービスが劣っている訳ではありません。通販型のデメリットが許容できるようであれば、通販型自動車保険を選んだほうが合理的な料金で保険を使うことができます。
実際にネット通販型を使っている人の口コミは?
今回は実際にネット通販型を使っている、切り替えた経験のある人を対象にアンケートをとってみました。利用者のリアルな声となっているので、通販社の利用を検討している方は参考にしてみてください。
※アンケート方法:2018年12月クラウドワークスで実施。9名の方にご協力いただきました。
いい口コミ
悪い口コミ
まとめ
- ネット通販型自動車保険では代理店に見られるような担当者がつかないため、それがデメリットとなる可能性はある。補償内容は自分で選ぶ必要があること、事故対応時にワンクッションを挟んでもらえないことなどが代表的な例。またデメリット等級の受け入れが厳しいことや。クレジットカードで分割払いができるところが限られていることなどもあげられる。
- 事故対応では初動対応時間が短いことは通販型自動車保険のデメリット。また事故対応時にプロのスタッフのワンクッションがないため、事故状況の伝え方を間違えれば保険約款を外れ支払いがされない可能性も否定できない。
今回は安い自動車保険のデメリットについて解説をしていきました。安いからといってサービスの内容が落ちるわけではないこと、ネット通販型自動車保険のデメリットなどわかっていただけたと思います。
ネット通販型自動車保険の最大のメリットは保険料の安さです。今回説明したデメリットも考えながら、それでもメリットの方が大きいと考えるならばネット通販型自動車保険を、デメリットの方が大きいと考えるならば代理店型自動車保険を選ぶのが良いでしょう。
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